広島県の人的資本経営ひろしまのHP「働き方改革事例」でキャピタルコーポレーションの取り組みを紹介していただきました。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/hcm-jirei/1025720.html
業員の声に耳を傾け、経営改革を実現
株式会社キャピタルコーポレーション
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DATA
法人名
株式会社キャピタルコーポレーション
所在地
広島市中区大手町1-1-26
業務内容
飲食店の経営、お惣菜製造、通信販売事業
従業員数
39人(男性18人、女性21人)
(2024年9月時点)
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株式会社キャピタルコーポレーションの働きがい向上に向けた取組
1 意見を肯定することで従業員側から提案しやすい雰囲気を醸成
2 自由に話し合える場、オフサイトミーティングの実施
3 店舗横断的なプロジェクトチームを結成
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今回の取材でお答えいただいた代表取締役 村井 由香(むらい ゆか)氏
取組の背景
―どういったきっかけで働きがいの向上に取り組むようになったのですか。
19年前に父親から事業を承継したのですが、それまでは、会社を継いで社長になると考えてもいない「専業主婦」でした。父の体調不良をきっかけに突然、社長になったことから、就任当初は、経営者としてどうしたらいいのかわからず戸惑いばかりの毎日。とにかく、“私についてきてくれる従業員の皆さんのことを一番大切に”という思いで、会社経営を考えてきました。彼らがいきいきと活躍できる場所をつくるにはどうしたらよいか。そう思ってきたことが、結果的に「働きがいの向上」につながったと考えています。
働きがい向上に向けた取組
1 従業員側からの提案を受け入れる
―経営者になってどんなことを行いましたか。
最初に「経営計画書」を作成したのですが、最初はすべて自分一人で決め、私が目指すものをそこに記載し、従業員に提示していました。しかし、飲食に関しては従業員の方がはるかに経験豊富なため、素敵な意見やアイデアをたくさん持っています。そのことに気づき、いっしょに話し合い、意見をしっかり聞きながら、経営計画をつくるようやり方を変えました。従業員と話し合う際には、相手の意見を否定せず、受け入れることが大切だと考えています。一人ひとりが自分の気持ちを自由に表現できる「心理的安全性」が高い職場をつくることを目指し、今でも話し合いの場を多く持つようにしています。一人ひとりとの対話を丁寧に行うという考え方を貫き、コロナ禍の苦しい時期も、従業員と共に乗り越えることができました。
―具体的にコロナ禍の時期をどのように乗り越えてきたのですか。
まず、いつまで続くかわからない不安を前に、従業員全員と「会社をつぶさず生き残る」を目標にしました。
お店を開くことができない状況のなか、作っていた経営計画は実現不可能と判断し、それまでの経営計画を一度破棄。会社を存続させるための「生き残るための7か条」を従業員とともに作成しなおしました。「会社を大切に思う気持ちを持つ」「前向きに笑顔で明るくチャレンジ」「良好な人間関係を築く」など、危機的状況だからこそ基本に立ち返ることを意識しました。従業員も今できることをやろうと必死でしたが、そのなかで目指すべき道筋を示せたと思います。
―コロナ禍からテイクアウトに力を入れ始めたのですね。
最初の緊急事態宣言が出されたときに、従業員から「テイクアウトをしませんか」との提案がありました。店を稼働させると、その分コストはかかるし、新しい設備等の投資も必要ですから、このタイミングで失敗したらと、内心はすごく不安で…。
ですが、「従業員の提案を受け入れる。否定しない。」と自分で決めたことを貫かなければと、不安な気持ちを抱きながらも「ゴーサイン」を出しました。
結果、開発した焼鳥弁当は人気となり、その後の売上を支え、今ではデリバリーサービスでも高い評価をいただけるまでになりました。デリバリーの成功に関しては提案してくれた従業員をはじめとする全スタッフが、会社を存続させるために一生懸命考えてくれた結果だと思います。
こういった「従業員の意見を取り入れる姿勢」は、メリットが大きいと実感しました。
2 自由に話し合うオフサイトミーティング
―提案をしやすい関係性をつくれたことが功を奏したわけですね。
私は、これまでの経験から、「従業員側の意見を経営戦略に取り込むこと」が、働きがいの向上につながると考えています。テイクアウトへの挑戦も、経営側に直接意見しやすい関係性ができていたから生まれたわけで、現場の思いを否定せずに受け入れたことで大きく実を結んだ成果だと思っています。当社では、社長と従業員が、立場に関係なく自由に話し合う「オフサイトミーティング」の場を設けています。議題は、仕事に直接関係する課題でも、人間関係で感じたちょっとしたもやもやでも構いません。それらを社員みんなで共有する場があるのが重要。時には、私の意見が否定されることもあるんですよ。それぐらい、オープンで自由に話せる関係性を築けていることが大切だと感じています。
―そのほかの取組を教えてください。
従業員に対しては年3回の個人面談を実施し、目標達成度や会社への要望を確認しています。アルバイトの方々に対して、できていること、できていないことを明確にする「星取表」を各店長が付け、本人の評価と上司の評価をすり合わせています。
―社長自身の自己改革もテーマに掲げていますね。
まず自分が変わらないと、働きがいの向上にはつながらないと思っています。現場からの意見を吸い上げて全体をまとめていくボトムアップには、強烈なリーダーシップや、どんな意見が出てきても驚かない覚悟や対応力が必要ですし、私自身が常に自己変革し、学び続ける姿勢が求められます。現場から上がってくる要望に対してすぐに対応できなくても、時間をかけて必ず変えていくと従業員には伝えています。
3 店舗横断的なプロジェクトチームを結成
―最近、プロジェクトチームを立ち上げたそうですね。
2024年から、商品開発、情報発信、業務改善などさまざまなテーマを設定し、それぞれに対して興味を持ったメンバーが店舗横断的に集まり、課題解決に向けて自主的に動くプロジェクトチームをスタートさせました。売上面でいうと店舗同士が普段はライバルなのですが、経営計画に反映していくための場では、ライバルではなく、助け合う仲間です。
そういう意識が芽生えてきたのを感じています。
―さまざまな取組を行った後にどんな変化がありましたか。
従業員一人ひとりが責任をもって仕事に取り組むようになり、会社へ貢献する意識が高まり、定着率も上がりました。そして何より、役職に関わらず提案をしてくれる従業員が増えたことに頼もしさを感じています。
取組の中で感じた難しさや課題
―取組について難しかった点、課題を教えてください。
変革を前にすると、どうしても以前と同じことをやり続けたいという思いが強くなるので、現状から変わることのメリットをどう理解してもらうかが課題だと感じています。
また、アルバイトの皆さんに対して会社のビジョンや理念にいかに共感してもらうかについても、難しさを感じています。
「働きがいのある会社」に認定
―取組が評価され「働きがいのある会社」として認定されました。
GPTW※の働きがい調査を実施し、2023年2月に「働きがいのある会社」として認定していただきました。働きがいにつながるポイントとして「会社への貢献実感が高い」・「経営・管理者層の期待が明確」「新しいことや改善への挑戦が称賛されている」などの取組が同規模の他社と比較し相対的に、当社の特徴になっているとわかりました。一方で、福利厚生制度について従業員に十分周知されていないことがわかったので、認知度を向上させるための広報活動に現在は力を入れています。
※Great Place To Work(GPTW)は世界最大級の意識調査機関。世界約150ヶ国で、「働きがいのある会社」を調査・分析し、認定・ランキングとして発表している。
HP:https://hatarakigai.info/
採用面への影響
―採用面への影響はいかがですか。
最近、採用した2名は、どちらも「働きがいのある会社」に認定された企業であることを志望理由に挙げてくれました。飲食業の中で働きがいの向上を目指す企業はまだまだ少ないので、採用面での付加価値になるのだなと実感しました。
今後目指すべきこと
―今後に向けて考えていることを教えてください。
新規店舗の開店に向けた従業員育成や役員育成は、今後の課題です。
また、営業時間は夕方から深夜になりますが、育児や介護など従業員の置かれている状況に合わせて勤務時間を選択できる制度導入を検討しています。
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従業員の声
平山 和也さん
新天地店 店長
完全週休2日制が定着していて、育児休暇やリフレッシュ休暇を取得しやすい風土が定着しており、安心して元気に働けることに喜びを感じています。
他の飲食店で働いた経験もありますが、飲食業界でここまで休みがきちんと決まって取れるところは少ないと思います。
また、自分の意見が言いやすく、意志を持って働くことができ、やりがいが感じられるのも魅力です。